連載「HRT音声分析って、なんだろう?」 11
バイノーラルビートの先にあるサウンド技術
「バイノーラルフェイジング」2 山田 剛
■まず、前回の「バイノーラルビート」の話題のおさらいです。
○左右の耳に異なった周波数サウンドを流す
↓
○脳は、2つの周波数の差を解消(解決)しようとする
↓
○脳内に、第3の波「バイノーラルビート」が発生
↓
○左右両脳(全脳)の同調・調和
周波数同調現象(エントレインメント)によって、アルファ波などに誘導
HRT開発者ダンエステス氏は、
「脳は、このように左右から異なる刺激を与えられるのが好きで、
それに上手に反応して、
全脳シンクロニー(同期、同調 whole-brain synchrony)することを好む傾向がある」
と述べています。
■位相を変えた周波数を左右の耳に流す
さて、ここからは「バイノーラルフェイジング」のお話になります。
周波数をグラフで表した場合をイメージしてみてください。
通常、波の線は、X軸Y軸が「0」の地点から描かれますよね。
そして、グラフに2つの周波数(波の線)を描いた場合、
波のピークが同じ領域にある場合を、「同相」といいます。
同じ位相という意味です。
2つの波は、干渉しあって、第3の波を生み出します。
これが、バイノーラルビートになります。
A)相補的組合わせによる波の高まり
B)減殺敵組合せによる干渉
signal strength/信号強度
superposition/(波の)重ね合わせ,重畳
wave energy/波のエネルギー
time時間
上の図はどちらもふたつの波を混合したときのものである。
A図は相補的高まり、強化であり、
B図は減殺的干渉の様子を表している。
(Aのように)ピークが同じところに来る場合は、
ふたつの波はコヒーレントで「同相」であると考えられる。
(Bのように)ピークが異なっている場合はインコヒーレント、
つまりばらばらで、かつ「異相」であるということを示す。
ピークがばらばらの何百万もの波はホワイトノイズのように聞こえるが、
同じく何百万でもピークがすべて揃っているものは、銃声のような音に聞こえる。
一方、HRTで利用されている「バイノーラルフェイジング」は、
位相を変えた周波数を左右の耳に与えるということです。
例えば、「0」からスタートした周波数と「+5」からスタートした周波数が、
両耳からそれぞれ聴こえるような感じです。
このバイノーラルフェイジング(位相の相違)を利用することについて、
ダンエステスは、次のように述べています。
これまではその周波数の差を利用していたのに対し、
同じ周波数の波を使い、そのフェイジング(位相化)の相違を利用する点が違っている。
同じ周波数で、ふたつの異なる位相に持っていくには、
現実(実)と仮想(虚)の要素に分離することが必要である。
このふたつの要素はそれぞれ、信号の実際の部分と潜在的部分とを表現している。
私達が何かを言うとき、実際の物理的肉体から発している部分もあるが、
また、その今話していることについて、自分がどう感じているか・・・、
つまり潜在する霊的自己から生じている部分も存在しているのである。
科学用語では、これらを正弦波と余弦波と呼び、互いに90°の角度を保って進行する。
要約すると、バイノーラルフェイジングで利用する周波数は、
HRT音声分析から分離抽出された2つの周波数を利用することになります。
1)現実(実際)の周波数-肉体を使って発声された声
2)仮想(潜在)の周波数-発声した内容について、自分がどう感じているか、
内的自己・霊的自己を表す
ということになります。
バイノーラルビートが、左右両脳に働きかけるのに対して、
バイノーラルフェイジングは、肉体と意識(精神)に働きかけようとしているのが
お分かりいただけると思います。
HRTセッションを体験した方は、経験したことがあると思いますが、
左右の耳に、ちょっとずれたサウンドが聴こえ始め、聴き込んでいくうちに、
ある音のビートが強くなってきたり、弱くなってきたり、
聴こえていなかったサウンドがだんだん浮上してきたりなど、
かなり複雑なサウンドパターンが展開してゆきます。
これが、バイノーラルフェイジングのサウンド効果です。
次号では、
この「現実と仮想」の周波数の相違を解決(同調)しようとする作用によって
体験者に、どのような変化が起きるかについてご紹介します。
(次号につづく)
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